【古事記】(原文・読み下し文・現代語訳)上巻・本文 その弐

古事記

建速須佐之男命たけはやすさのおのみこと

出典:古事記 : 国宝真福寺本. 上 – 国立国会図書館デジタルコレクション

故於是速須佐之男命言然者請天照大御神將罷乃參上天時山川悉動國土皆震爾天照大御神聞驚而詔我那勢命之上來由者必不善心欲奪我國耳

(かれ)於是(ここにおいて)速須佐之男(はやすさのを)(みこと)(い)はく然者(しかくあれば)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(まさ)(かへ)らむと(こ)ひに(すなは)(あま)参上(まいのぼ)らむ時に山川(ことごと)(とよ)みて国土(くにつち)(ふる)ひき(ここに)天照大御神(あまてらすおほみかみ)聞こして驚きたまひて(しかるに)(のたま)ひしく我が那勢(なせ)(みこと)(これ)(のぼ)り来る(よし)(は)必ず不善(よからぬ)心にて(わ)が国を奪はむとおもほす耳(のみ)

これにより、速須佐之男はやすさのおみことが言いました。

「それなら、天照大御神あまてらすおおみかみに今すぐ戻りたいと申し上げるために、天に参上しよう。」

この言葉に、山川はことごとくどよめいて国の土はみな震えました。

天照大御神あまてらすおおみかみは、これを聞き驚き言いました。

「わが弟が上って来る理由は、間違いなく善い心ではなくただ私の国を奪いたいのみである。」

卽解御髮纒御美豆羅而乃於左右御美豆羅亦於御亦於左右御手各纒持八尺勾璁之五百津之美須麻流之珠而 【自美至流四字以音下效此】 曾毘良邇者負千入之靫 【訓入云能理下效此自曾至邇以音】 附五百入之靫

(すなは)御髮(みかみ)を解き御美豆羅(みみづら)(まと)(しかるに)(すなは)左右(ひだりみぎ)御美豆羅(みみづら)(に)(また)(みかづら)(に)(また)左右(ひだりみぎ)御手(みて)(に)(おのもおのも)八尺(やさか)勾璁(まがたま)(の)五百津(いほつ)(の)(み)(す)(ま)(る)(の)(たま)(まと)ひ持ちて(しかるに) 【美(よ)り流(ま)四字(よもじ)(こえ)(もち)てす(しも)(こ)(なら)ふ】 (そ)(び)(ら)(に)(は)(ち)(のり)(の)(ゆき)(お)ひて 【入を(よ)(の)(り)と云ふ(しも)(こ)(なら)ふ曽(よ)り邇(ま)(こえ)(もち)てす】 五百入(いほのり)(の)(ゆき)(つ)けたまひき

そして、直ちに髮を解き美豆羅みずら(男性の髪型)に結び直しました。

そして髪の左右に髪に左右の手に、それぞれたくさんの勾玉を貫いた珠の緒を巻きつけて、 背後には千本入りのゆき(矢筒)を背負い、さらに五百本入りのゆき(矢筒)を付けました。

亦所取佩伊都 【此二字以音】 之竹鞆而弓腹振立而堅庭者於向股蹈那豆美 【三字以音】 如沫雪蹶散而伊都【二字以音】之男建 【訓建云多祁夫】 蹈建而待問何故上來爾速須佐之男命答白

(また)(い)(つ) 【(こ)二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 (の)竹鞆(たかとも)(ところ)取り(は)かしたまひて(しかるに)弓腹(ゆはら)振り立て(しかるに)堅庭(かたには)(は)向股(むかもも)(に)踏み(な)(づ)(み) 【三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 (あは)(ゆき)(ごと)蹶散(くえはららかし)(しかるに)(い)(つ) 【二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 (の)男建(をたけぶ) 【建を(よ)(た)(け)(ぶ)と云ふ】 (ふ)(たけび)(しかるに)(ま)何故(なにゆえ)(のぼ)(きた)るかと問ひ(ここに)速須佐之男(はやすさのを)(みこと)答へて(まを)さく

また矢を取り、御稜威みいつ竹鞆たかとも(左手の装具)を装着し、弓を振り立て、堅い庭を足で踏んだところ太腿まで足を取られるも、沫雪あわゆきのように蹴散らし雄叫びを上げられました。
そして、足を踏みつけ待ちかまえ「どうして昇って来た。」と問いました。
速須佐之男命はやすさのおのみことは、答えて申し上げました。

僕者無邪心唯大御神之命以問賜僕之哭伊佐知流之事故白都良久 【三字以音】 僕欲往妣國以哭爾大御神詔汝者不可在此國而神夜良比夜良比賜故以爲請將罷往之狀參上耳無異心

(やつかれ)(は)(よこしま)なる心無し(ただ)大御神(おほみかみ)(の)(みこと)の問ひ(たま)ひしを(も)ちて(やつかれ)(の)(な)伊佐知流(いさちり)(の)(こと)(ゆえ)(まを)さく (つ)(ら)(く) 【三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 (やつかれ)(はは)の国に(ゆ)かむと(ほ)りて(も)ちて(な)くのみ(ここに)大御神(おほみかみ)(のたま)はく(いまし)(は)(こ)の国に(あ)不可(じ)(しかるに)神夜良比夜良比(かむやらひにやらひ)(たま)ひき(かれ)以為(おも)へらく(まさ)(かへ)(ゆ)かむとする(の)(かたち)(つ)げむ参上(まいのぼ)りし(のみ)(け)なる心無し

「私めによこしまな心はありません。ただ伊邪那岐大御神いざなぎのおおみかみが私へのめいを問いただされたので、私めが泣きじゃくり、『辛くてたまらないので、亡き母の国に行きたいのです。』と申し上げたのです。すると大御神おおみかみに『お前はこの国に、決していてはならない。』と追い払われてしまいました。そこで姉上に、戻りたい思いを申し上げるためにお目にかかりたいと考え参りました。異心はございません。」

爾天照大御神詔然者汝心之淸明何以知於是速須佐之男命答白各宇氣比而生子 【自宇以下三字以音下效此】

(ここに)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(のたま)はく然者(しかくあれば)(いまし)が心(の)清く(あか)きなるは何を(も)ちて知るや於是(ここにおいて)速須佐之男(はやすさのお)(みこと)答へて(まを)さく(おのおの)(う)(け)(ひ)(おいて)子を(な)さむ 【宇(よ)以下(しもつかた)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす(しも)(こ)(なら)ふ】

天照大御神あまてらすおおみかみは言いました。

「それなら、お前の心が清明であることを、どうやったら知ることができるのか。」

これに速須佐之男命はやすさのおのみことが答えて申し上げました。

「それぞれうけいを受け、子を産みましょう。」

うけいを受ける=先に神に結果を誓っておき、その通りのしるしの成否で神意をうかがう占いの事

故爾各中置天安河而宇氣布時天照大御神先乞度建速須佐之男命所佩十拳劒打折三段而奴那登母母由良邇 【此八字以音下效此】 振滌天之眞名井而佐賀美邇迦美而 【自佐下六字以音下效此】 於吹棄氣吹之狹霧所

(かれ)(ここに)(おのもおのも)天安河(あめのやすのかは)を中に置きて(しかるに)宇気布(うけふ)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(ま)建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと)(ところ)(みはかし)十拳剣(とかつのつるぎ)(わた)しまつりたまへと(こ)ひたまひて三段(みつをり)(う)(を)りて(しかるに)(ぬ)(な)(と)(も)(も)(ゆ)(ら)(に) 【(こ)八字(やもじ)(こえ)(もち)てす(しも)(こ)(なら)ふ】 天之真名井(あめのまない)に振り(すす)ぎて(しかるに)(さ)(が)(み)(に)(か)(み)(しかるに) 【佐(よ)(しも)六字(むもじ)(こえ)(もち)てす(しも)(こ)(なら)ふ】 吹き(う)つる気吹(いぶき)(の)狭霧(さぎり)(おいて)成りまさしし(ところ)

これがゆえに、それぞれが天安河あまのやすかわはさんで向かい合い、うけいを受けようとしました。

まず、天照大御神あまてらすおほみかみが、建速須佐之男命たけはやすさのをのみことの腰に下げた十拳剣とつかのつるぎ(十束剣)を渡すように言いました。

それを三つに折り、その触れ合う音を鳴らしながらあめ真名井まない(けがれなき水)で振るようにすすいで、噛み砕いて吹き出したところ霧のような息吹の中に神が現れました。

成神御名多紀理毘賣命 【此神名以音】 亦御名謂奧津嶋比賣命次市寸嶋/上/比賣命亦御名謂狹依毘賣命次多岐都比賣命 【三柱此神名以音】 速須佐之男命乞度天照大御神所纒左御美豆良八尺勾璁之五百津之美須麻流珠而奴那登母母由良爾振滌天之眞名井而佐賀美邇迦美而於吹棄氣吹之狹霧所成神御名正勝吾勝勝速日天之忍穗耳命

神は御名(みな)多紀理毘売(たきりびめ)みこと 【(こ)神名(かむな)(こえ)(もち)てす】 御名(みな)奧津嶋比売(おきつしまひめ)(みこと)(い)ふ次に市寸嶋/上/比売(いちきしまひめ)(みこと)(また)御名(みな)狭依毘売(さよりびめ)(みこと)(い)ふ次に多岐都比売(たきつひめ)(みこと)といふ 【三柱(みはしら)(こ)神名(かむな)(こえ)(もち)てす】 速須佐之男(はやすさのを)(みこと)天照大御神(あまてらすおほみかみ)の左の御美豆良(みみづら)(まと)はしし(ところ)八尺勾璁(やさかのまがたま)(の)五百津(いおつ)(の)美須麻流珠(みすまるのたま)(わた)したまへと(こ)ひまつりて(しかるに)奴那登母母由良爾(ぬなとももゆらに)天之真名井(あめのまない)に振り(すす)(しかるに)佐賀美邇迦美(さがみにかみ)(しかるに)吹き(う)つる気吹(いぶき)(の)狹霧(さぎり)(おいて)成りましし(ところ)御名(みな)正勝吾勝勝速日天之忍穗耳(まさかつあかつかつはやひあめのおしほみみ)(みこと)

その名を多紀理毘売命たきりびめのみこと、またの名を多紀理毘売命たきりびめのみことといいます。

続いて市寸嶋比売命いちきしまひめのみこと、またの名を狹依毘売命さよりびめのみことが現れ、続いて多岐都比売命たきつひめのみことが現れました。

合わせて三柱みはしらの神が現れました。

その後に速須佐之男命はやすさのおが、天照大御神あまてらすおおみかみの左のみずらに巻いていた多くの勾玉を通した珠の緒を渡してくださるように言いました。

みずら=頭頂で左右に分け、それぞれ耳のわきで輪をつくって束ねた髪型の事

そしてその触れ合う音を鳴らしながら、あめ真名井まないで振るようにすすいで、噛み砕いて吹き出したところ霧のような息吹の中に神が現れました。

名を正勝吾勝勝速日天之忍穗耳命まさかつあかつかつはやひあめのおしほみみのみことといいます。

亦乞度所纒右御美豆良之珠而佐賀美邇迦美而於吹棄氣吹之狹霧所成神御名天之菩卑能命 【自菩下三字以音】 亦乞度所纒御之珠而佐賀美邇迦美而於吹棄氣吹之狹霧所成神御名天津日子根命又乞度所纒左御手之珠而佐賀美邇迦美而於吹棄氣吹之狹霧所成神御名活津日子根命

(また)右の(ところ)御美豆良(みみづら)(まと)はしし(の)(たま)(わた)したまへと(こ)ひまつりて(しかるに)佐賀美邇迦美(さがみにかみ)(しかるに)吹き(う)つる気吹(いぶき)(の)狹霧(さぎり)(おいて)成りましし(ところ)御名(みな)天之菩卑能命(あめのほひのみこと) 【(ほ)(よ)(しも)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 (また)(ところ)(かづら)(まと)はしし(の)(たま)(わた)したまへと(こ)ひまつりて(しかるに)佐賀美邇迦美(さがみにかみ)(しかるに)吹き(う)つる気吹(いぶき)(の)狭霧(さぎり)(おいて)成りましし(ところ)御名(みな)天津日子根命(あまつひこねのみこと)(ところ)左の御手(みて)(まと)はしし(の)(たま)(わた)したまへと(こ)ひまつりて(しかるに)佐賀美邇迦美(さがみにかみ)(しかるに)吹き(う)つる気吹(いぶき)(の)狭霧(さぎり)(おいて)成りましし(ところ)御名(みな)活津日子根命(いくつひこねのみこと)

また、右のみずらに巻いていた多くの勾玉を通した珠の緒を渡してくださるように言いました。

噛み砕いて吹き出したところ霧のような息吹の中に神が現れ、名を天之菩卑能命あめのほひのみことといいます。

また、御鬘かずら(つる草の頭飾り)に巻いていた珠を渡して渡してくださるように言いました。

噛み砕いて吹き出したところ霧のような息吹の中に神が現れ、名を天津日子根命あまつひこねのみことといいます。

また、左の手に巻いていた珠を渡してくださるように言いました。

噛み砕いて吹き出したところ霧のような息吹の中に神が現れ、名を活津日子根命いくつひこねのみことといいます。

亦乞度所纒右御手之珠而佐賀美邇迦美而於吹棄氣吹之狹霧所成神御名熊野久須毘命 【自久下三字以音幷五柱】 於是天照大御神告速須佐之男命是後所生五柱男子者物實因我物所成故自吾子也先所生之三柱女子者物實因汝物所成故乃汝子也如此詔別也

(また)(ところ)右の御手(みて)(まと)はしし(の)(たま)(わた)したまへと(こ)ひまつりて(しかるに)佐賀美邇迦美(さがみにかみ)(しかるに)吹き(う)つる気吹(いぶき)(の)狭霧(さぎり)(おいて)成りましし(ところ)御名(みな)熊野久須毘命(くまのくすびのみこと) 【(く)(よ)(しも)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす(あは)せて五柱(いつはしら)】 於是(ここにおいて)天照大御神(あまてらすおおみかみ)速須佐之男(はやすさのお)(みこと)(つ)げたまはく(これ)(のち)生みまさえし(ところ)五柱(いつはしら)男子(をのこご)(は)物実(ものざね)(わ)が物に(よ)(ところ)成るが(ゆえ)(あ)(よ)りなれる子(なり)(さき)に生みまさえし(ところ)(の)三柱(みはしら)女子(めのこご)(は)物実(ものざね)(な)が物に(よ)(ところ)に成るが(ゆえ)(すなは)(な)が子(なり)(こ)詔別(のりわけ)(ごと)(なり)

また、右の手に巻いていた珠を渡してくださるように言いました。

噛み砕いて吹き出したところ霧のような息吹の中に神が現れ、名を熊野久須毘命くまのくすびのみことといいます。

こうしたことから、天照大御神あまてらすおおみかみ速須佐之男命はやすさのおに告げます。

「後で生んだ五柱いつはしらの男子は、物の実質は私の物から成ったので、私からできた子です。

先に生んだ三柱みはしらの女子は、物の実質はお前の物から成ったということは、お前の子です。これが詔別のりわけ(うけいの結果)です。」

故其先所生之神多紀理毘賣命者坐胸形之奧津宮次市寸嶋比賣命者坐胸形之中津宮次田寸津比賣命者坐胸形之邊津宮此三柱神者胸形君等之以伊都久三前大神者也

(かれ)(そ)の先に生みし(ところ)(の)多紀理毘売(たぎりひめ)(みこと)(は)胸形(むなかた)(の)奧津(おきつ)宮に(ま)し次に市寸嶋比売(いちきしまひめ)(みこと)(は)胸形(むなかた)(の)中津(なかつ)宮に(ま)し次に田寸津比売(たきつひめ)(みこと)(は)胸形(むなかた)(の)辺津(へつ)宮に(ま)(こ)三柱(みはしら)の神(は)胸形君(むなかたきみ)(ら)(これ)(も)(い)(つ)(く)三前(みまへ)大神(おほかみ)(もの)(なり)

そして、その前に産みました神、多紀理毘売たぎりひめみこと(奥津島比売命おきつしまひめのみこと)は、胸形むなかた(宗像むなかた)の奧津宮おきつぐう(現在の福岡県宗像市にある宗像大社奧津宮といわれる)に御座おわしまして、次に市寸嶋比売いちきしまひめみことは、胸形むなかた(宗像むなかた)の中津宮なかつぐう(現在の福岡県宗像市にある宗像大社中津宮といわれる)に御座おわしまして、次に田寸津比売たきつひめみこと(多岐都比売命タギツヒメノミコト)は、胸形むなかた(宗像むなかた)の辺津宮へつぐう(現在の福岡県宗像市にある宗像大社辺津宮といわれる)に御座おわします。

この三柱みはしらの神は、胸形君むなかたきみ(宗像氏むなかたし筑前国ちくぜんのくに《福岡県西部》を支配していた海洋豪族)がおまつりする三前みまえの大神としている神々のことです。

故此後所生五柱子之中天菩比命之子建比良鳥命 此出雲國造无邪志國造上菟上國造下菟上國造伊自牟國造津嶋縣直遠江國造等之祖也 次天津日子根命者 凡川內國造額田部湯坐連茨木國造倭田中直山代國造馬來田國造道尻岐閇國造周芳國造倭淹知造高市縣主蒲生稻寸三枝部造等之祖也

(かれ)(こ)(のち)に生みし(ところ)五柱(いつはしら)の子(の)天菩比命(あめのほひのみこと)(の)建比良鳥命(たけひらとりのみこと) (こ)出雲(いづも)国造(くにのみやつこ)无邪志(むさし)国造(くにのみやつこ)上菟上(かみつうなかみ)国造(くにのみやつこ)下菟上(しもつうなかみ)国造(くにのみやつこ)伊自牟(いじむ)国造(くにのみやつこ)津嶋(つしま)県直(あがたのあたへ)遠江(とほつあふみ)国造(くにのみやつこ)(ら)(の)(おや)(なり) 次天津日子根命(あまつひこねのみこと)(は) 凡川内(おほしかはち)国造(くにのみやつこ)額田部湯坐(ぬかたべのゆえ)(むらじ)茨木(むばらき)国造(くにのみやつこ)倭田中(やまとのたなか)(あたひ)山代(やましろ)国造(くにのみやつこ)馬来田(うまくた)国造(くにのみやつこ)道尻岐閉(みちのしりのきへ)国造(くにのみやつこ)周芳(すはう)国造(くにのみやつこ)倭淹知(やまとのあむち)(みやつこ)高市県主(たけちのあがたぬし)蒲生稲寸(がまふのいなき)三枝部(さきくさべ)(みやつこ)(ら)(の)(おや)(なり)

また、この後に生みなされました五柱いつはしらの子の中で、天菩比命あめのほいのみことの子、建比良鳥命たけひらとりのみことは、「出雲いずも(島根県東部)の国造くにのみやつこ(国を治めた豪族)」・「武蔵むさし(東京都/埼玉県/川崎市/横浜市)の国造くにのみやつこ」・「上海上かみつうなかみ(千葉県市原市の一部)の国造くにのみやつこ」・「下海上しもつうなかみ(千葉県旭市/銚子市/香取郡一帯)の国造くにのみやつこ」・「伊甚いじむ(千葉県茂原市の一部/長生郡長南町/睦沢町の一部)の国造くにのみやつこ」・「津島つしま(対馬)の県直あがたのあたへ(地方豪族)」・「遠江とおとうみ(静岡県西部)の国造くにのみやつこ」らの祖先です。

次に、天津日子根命あまつひこねのみことは、「凡河内おおしこうち(大河内おおしかわち=大阪府東部/北中部/南西部/兵庫県南東部)の国造くにのみやつこ」・「額田部湯坐ぬかたべのゆえ(奈良県大和郡山市を本拠とする豪族)のむらじ(八色やくさかばねの七番目に当たる氏族)」・「茨城いばらき(茨城県中部)の国造くにのみやつこ」・「倭田中やまとのたなか(奈良県大和郡山市の地方豪族)のあたへ」・「山城やましろ(京都府南部)の国造くにのみやつこ」・「馬来田うまくた(千葉県中部)の国造くにのみやつこ」・「道尻岐閉みちのしりのきへ(茨城県北部)の国造くにのみやつこ」・「周防すおう(山口県東部)の国造くにのみやつこ」・「倭淹知やまとのあむち(奈良県山辺郡)のみやつこ」・「高市たけち(奈良県大和高田市/橿原市)の県主あがたぬし」・「蒲生がもう(滋賀県蒲生郡)の稲寸いなき((八色やくさかばねの八番目に当たる氏族)」・「三枝部さきくさべみやつこ(天皇の補佐をする伴造とものみやつこ)」らの祖先です。

爾速須佐之男命白于天照大御神我心淸明故我所生子得手弱女因此言者自我勝云而於勝佐備 【此二字以音】 離天照大御神之營田之阿 【此阿字以音】 埋其溝亦其於聞看大嘗之殿 屎麻理 【此二字以音】 散

(かくありて)速須佐之男(はやすさのを)(みこと)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(に)(まを)すに(あ)が心清く明かし(かれ)(あ)(な)せる(ところ)手弱(たよわ)(め)(う)(よ)りて(こ)れ言ふ(は)(おのづか)(あれ)勝つと云ふ(しか)して勝ち(さ)(び) 【(こ)二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 (おいて)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(の)営田(つくだ)(の)(あ) 【(こ)の阿の(もじ)(こえ)(もち)てす】 を(はな)(そ)の溝を埋めぬ(また)(そ)大嘗(おほなめ)(の)殿(との)を聞き(み)るに(おいて)(くそ)(ま)(り) 【(こ)二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 散らす

そうしたあと、速須佐之男命はやすさのおのみこと天照大御神あまてらすおおみかみに申し上げました。

「私の心が清明だったからこそ、私が生んだ子にか弱い女子を得ました。それにより解るのはおのずから私が勝ったということなのです。」

そして勝ち誇り、天照大御神の営田つくだ(所有している田)のあぜを壊し、その溝を埋めてしまいました。

また、御殿で大嘗祭だいしょうさいがあると聞き、出かけていってくそをし撒き散らしました。

故雖然爲天照大御神者登賀米受而告如屎醉而吐散登許曾 【此三字以音】 我那勢之命爲如此又離田之阿埋溝者地矣阿多良斯登許曾 【自阿以下七字以音】 我那勢之命爲如此登 【此一字以音】 詔雖直猶其惡態不止而轉天照大御神坐忌服屋而令織神御衣之時穿其服屋之頂逆剥天斑馬剥而所墮入時天服織女見驚而於梭衝陰上而死 【訓陰上云富登】

(かれ)(しか)(な)すと(いへ)ども天照大御神(あまてらすおほみかみ)(は)(と)(が)(め)(ず)して(しかるに)(の)りたまふに(くそ)(ごと)きは(え)ひて(しかるに)(たぐ)り散らす(と)(こ)(そ) 【(こ)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 我那勢(あがなせ)(の)(みこと)(こ)(ごと)(す)れ又(た)(の)(あ)(はな)ち溝を(う)(は)(つち)(ほこり)(あ)(た)(ら)(し)(と)(こ)(そ) 【阿(よ)以下(しもつかた)七字(ななもじ)(こえ)(もち)てす】 我那勢(あがなせ)(の)(みこと)(こ)(ごと)(す)(と) 【(こ)一字(ひともじ)(こえ)(もち)てす】 (の)りたまふと(いへど)(た)(な)(そ)の悪しき(さま)不止(やま)ずして(しかるに)(かへ)りて天照大御神(あまてらすおほみかみ)忌服屋(いみはたや)(いま)して(しかるに)神御衣(かむみけ)を織り(し)めし(の)(そ)服屋(はたや)(の)(いただき)穿(うが)(あめ)斑馬(ふちこま)逆剥(さかは)ぎに(は)ぎて(しかるに)(お)とし(い)(ところ)(あめ)服織女(はたおりめ)見驚きて(しかるに)(ひ)(に)陰上(ほと)(つ)きて(しかるに)死せり 【陰上を(よ)(ほ)(と)と云ふ】

こうしたことをしても、天照大御神はとがめずこう言いました。

くそのようなものは、酔ってしまい吐きちらしてしまったのと大差ありません。」

「田のあぜを壊して溝を埋めてしまったことについては、これで土を新しくできるからいいのです。」

このように言っていたのですが、相変わらず悪い態度はやむことがありませんでした。

それどころか、天照大御神あまてらすおおみかみ忌服屋いみはたでん(斎服殿=神聖な機を織る場所)に行き神御衣かむみけ(神に献上する衣)を織るよう命じられていた時に、 その屋根のてっぺんに穴を開け、天斑馬あめのふちこま(まだら模様の馬)を逆剥さかはぎにいで(尾の方から頭に向かって皮をいで)落として入れました。

あめ服織女はたおりめ(機織り女)はそれを見て驚いてしまい、(シャトル=織物を織るときに経糸たていとの間に緯糸よこいとを通すのに使われる道具)によって陰部を突かれ死んでしまいました。

故於是天照大御神見畏開天石屋戸而刺許母理 【此三字以音】 坐也爾高天原皆暗葦原中國悉闇因此而常夜往於是萬神之聲者狹蠅那須 【此二字以音】 滿萬妖悉發是以八百萬神於天安之河原神集集而 【訓集云都度比】 高御產巢日神之子思金神令思 【訓金云加尼】

(かれ)於是(これにおいて)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(め)(おそ)天石屋戸(あまのいはやと)を開き(しかるに)(さし)(こ)(も)(り) 【(こ)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 (ませ)(なり)(か)くありて高天原(たかあまはら)皆暗く葦原中国(あしはらのなかつくに)(ことごと)(くら)(こ)(よ)りて(しかるに)常夜(とこや)(い)きぬ於是(これにおいて)(よろづ)の神(の)(は)狹蠅(さばへ)(な)(す) 【(こ)二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 満ち(よろづ)(あやしき)(ことごと)(はな)てり(これ)(もち)八百万(やほよろづ)の神(あめ)の安(の)河原(かはら)(おいて)(かむ)集集(つどひつどひ)(しかるに) 【集を(よ)(つ)(ど)(ひ)と云ふ】 高御産巣日神(たかみむすびのかみ)(の)思金神(おもひかねのかみ)思は(し)め 【金を(よ)(か)(ね)と云ふ】 

これゆえに、天照大御神あまてらすおおみかみはそれを見て恐れ、天石屋あまのいわやの戸を開き立てこもってしまいました。

このことで、高天原は皆暗く葦原中国あしはらのなかつくにはことごとく暗くなり、これによって常夜とこやになってしまいました。

そして、よろずの神の声がざわめき満ち、よろずの妖気がことごとく発せられました。

そこで、八百万やおよろずの神は天安河あめのやすのかわの河原に三々五々集まり、その中で高御産巣日神たかみむすびのかみの子、思金神おもいかねのかみに考えていただきました。

集常世長鳴鳥令鳴而取天安河之河上之天堅石取天金山之鐵而求鍛人天津麻羅而 【麻羅二字以音】 科伊斯許理度賣命 【自伊下六字以音】 令作鏡科玉祖命令作八尺勾璁之五百津之御須麻流之珠而召天兒屋命布刀玉命 【布刀二字以音下效此】 而內拔天香山之眞男鹿之肩拔而

常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)を集め鳴か(し)(しかるに)天安河(あめのやすのかは)(の)河上(かはかみ)(の)天堅石(あめのかたしは)を取り天金山(あめのかなやま)(の)(くろがね)を取り(しかるに)鍛人(かぬち)天津(あまつ)(ま)(ら)(ま)(しかるに) 【麻羅の二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 (い)(し)(こ)(り)(ど)(め)(みこと) 【伊(よ)り下六字(むもじ)(こえ)(もち)てす】 を(おほ)し鏡を作ら(し)玉祖命(たまのおやのみこと)(おほ)八尺勾瓊之五百津之御須麻流之珠(やさかのまがたまのいほつのみすまるのたま)を作ら(し)めて(しかるに)天児屋命(あめのこやねのみこと)(ふ)(と)(だま)(みこと) 【布刀二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす(しも)(こ)(なら)ふ】 を(め)して(しかるに)天香山(あまのかぐやま)(の)真男鹿(まをしか)(の)肩を内抜きに抜きて(しかるに)

そして常世長鳴鳥とこよのながなきどりを集めて鳴かせ、天安河あめのやすのかわの川上の天堅石あめのかたしわ(天上にある硬い石)を採ってきて、天金山あめのかなやま(天上の金山)から鉄を採取して、鍛冶をしていただくために天津麻羅あまつまらの神(鍛冶の神)を探してきて鋳造させ、石凝姥命いしこりどめのみことに担当させて八咫鏡やたのかがみ(三種の神器のうちのひとつ)を作らせ、玉祖命たまのおやのみことに担当させて八尺勾瓊之五百津之御須麻流之珠やさかのまがたまのいほつのみすまるのたま(八尺瓊勾玉やさかにのまがたま=三種の神器のうちのひとつ)を作らせました。

また、天児屋命あめのこやねのみこと太玉命ふとだまのみことを呼んで、 天香山あまのかぐやま真男鹿まをしか(牡鹿おしか)の肩甲骨を取り、 天香山あまのかぐやま波波迦ははか(ウワミズザクラ)を取り、 占いをする準備をはじめました。

取天香山之天之波波迦 【此三字以音木名】 而令占合麻迦那波而 【自麻下四字以音】天香山之五百津眞賢木矣根許士爾許士而 【自許下五字以音】 於上枝取著八尺勾璁之五百津之御須麻流之玉於中枝取繋八尺鏡 【訓八尺云八阿多】 於下枝取垂白丹寸手青丹寸手而 【訓垂云志殿】 此種種物者布刀玉命布刀御幣登取持而天兒屋命布刀詔戸言禱白

天香山(あまのかぐやま)(の)天之(あまの)(は)(は)(か)を取り 【(こ)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす木の名】 (しかるに)占合(うら)(ま)(か)(な)(は)(し)(しかるに) 【麻(よ)(しも)四字(よもじ)(こえ)(もち)てす】 天香山(あまのかぐやま)(の)五百津真賢木(いほつまさかき)をば(い)(ね)(こ)(じ)(に)(こ)(じ)(しかるに) 【許(よ)(しも)五字(いつもじ)(こえ)(もち)てす】 上枝(ほつえ)(おいて)八尺勾瓊之五百津之御須麻流之玉(やさかのまがたまのいほつのみすまるのたま)を取り(つ)中枝(なかつえ)(おいて)八尺(やあた)の鏡 【八尺を(よ)(や)(あ)(た)と云う】 を取り(か)下枝(しづえ)(おいて)(しら)丹寸手(にきて)(あを)丹寸手(にきて)を取り(し)(しかるに) 【垂を(よ)(し)殿(で)と云ふ】 (こ)種種(くさぐさ)の物(は)布刀玉(ふとだま)(みこと)布刀(ふと)御幣(みてぐら)(と)取り持ちて(しかるに)天児屋(あめのこやね)(みこと)布刀(ふと)詔戸(とりと)言祷(ことほ)(まを)せり

天香山あまのかぐやま五百津真榊いおつまさかき(枝が生い茂った常緑樹)をすべて掘り起し、上枝ほつえ(上の方の枝)には、八尺勾瓊之五百津之御須麻流之玉やさかのまがたまのいほつのみすまるのたま(八尺瓊勾玉やさかにのまがたま)を取り着け、中枝なかつえ(中の方の枝)には八咫鏡やたのかがみを取り懸け、下枝しづえ(下の方の枝)には白丹寸手しらにぎて(梶またはこうぞで作った糸)・青丹寸手あおにぎて(麻で作った糸)を垂らして、これら各種の物を太玉命ふとだまのみこと布刀ふと御幣みてぐら(おん美弓久良みてくら=献上物を持つ者)と共にお供えしました。

そして、天児屋命あめのこやねのみこと祝詞のりととなえてたたえ出てくることを願いました。

而天手力男神隱立戸掖而天宇受賣命手次繋天香山之天之日影而爲天之眞拆而手草結天香山之小竹葉而 【訓小竹云佐佐】 於天之石屋戸伏汙氣 【此二字以音】 蹈登杼呂許志 【此五字以音】 爲神懸而掛出胸乳裳緖忍垂於番登也爾高天原動而八百萬神共咲

(しか)して天手力男神(あめのたぢからをのかみ)戸の(わき)に隠れ立ち(しかるに)天宇受売命(あめのうずめのみこと)手次(たすき)天香山(あまのかぐやま)(の)天之(あまの)日影(ひかげ)(つ)(しかるに)(かづら)天之(あまの)真拆(まさき)(な)(しかるに)手草(たぐさ)天香山(あまのかぐやま)(の)小竹(ささ)の葉を(ゆ)(しかるに) 【小竹を(よ)(さ)(さ)と云ふ】 天之石屋戸(あまのいはやと)(おいて)汚気(うけ) 【(こ)二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 を伏せ踏み(と)(ど)(ろ)(き)(し) 【(こ)五字(いつもじ)(こえ)(もち)てす】 神懸(かむが)かり(し)(しかるに)胸乳を掛き(いで)(も)(を)番登(ほと)(おいて)(おし)垂れぬ(なり)(かくあり)高天原(たかあまはら)(とよ)みて(しかるに)八百万(やほよろづ)の神共に(わら)ひき

 

そして、天手力男神あめのたぢからをのかみが戸の脇に隠れ立ちました。

天宇受売命あめのうずめのみことは、たすき天香山あまのかぐやまあまひかげ(ヒカゲノカズラ)を着け、 かずら(髪飾り)としてあま真拆まさき(ツルマサキ)を着け、手草たぐさ(神事の際に持つもの)として天香山あまのかぐやま小竹おざさ(小笹)の葉を束ねて持ち、 天之石屋戸あまのいわやとの前におけを伏せ踏み鳴らして神懸かみがかり(物にかれて正常心を失った状態)になり、乳房をかき出して着物の紐を陰部まで押し下げました。

これを見た八百万やおよろずの神の笑いの声が、高天原たかあまはらに鳴り響きました。

於是天照大御神以爲怪細開天石屋戸而內告者因吾隱坐而以爲天原自闇亦葦原中國皆闇矣何由以天宇受賣者爲樂亦八百萬神諸咲爾天宇受賣白言益汝命而貴神坐故歡喜咲樂如此言之間天兒屋命布刀玉命指出其鏡示奉天照大御神之時天照大御神逾思奇而稍自戸出而臨坐之時其所隱立之天手力男神取其御手引出卽布刀玉命以尻久米 【此二字以音】 繩控度其御後方白言從此以內不得還入故天照大御神出坐之時高天原及葦原中國自得照明

(ここ)(おいて)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(あや)しと以為(おも)ほし細く天石屋(あまのいはや)の戸を開きて(しかるに)内に(の)(は)(あれ)隠れ(ま)すに(よ)りて(しかるに)天原(あまのはら)(みづか)(くら)(また)葦原中国(あしはらのなかつくに)(くら)しと以為(おも)ひきや(い)何由(なにゆえ)(に)天宇受売(あめのうずめ)(は)楽しきを(な)(また)八百万(やほよろづ)の神は(もろもろ)(わら)ふや(こ)れに天宇受売(あめのうずめ)(まを)して(い)はく(な)(みこと)(ま)して(しかるに)(たふと)き神(ま)(ゆえ)歓喜(よろこ)(わら)ひ楽し(こ)(ごと)く言ひし(の)(ま)天児屋命(あめのこやねのみこと)布刀玉命(ふとだまのみこと)(そ)の鏡を指し(いだ)天照大御神(あまてらすおほみかみ)に示し(たてまつ)(の)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(いよいよ)(く)しと思ほしめして(しかるに)(やや)(よ)(いで)(しかるに)(のぞ)(ま)しし(の)(そ)の隠れ立つ(ところ)(の)天手力男神(あめのたぢからをのかみ)(そ)御手(みて)を取り引き(いで)(すなは)布刀玉(ふとたま)(みこと)(しり)(く)(め) 【(こ)二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 (なは)(もち)(そ)(み)後方(しりへ)(ひ)(わた)(まを)して(い)はく(ここ)(よ)(うち)(もち)(かへ)り入り不得(えず)(かれ)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(いで)(まし)(の)高天原(たかあまのはら)(と)葦原中国(あしはらのなかつくに)(おのづか)ら照り明り得たり

こうした様子に天照大御神あまてらすおおみかみは不思議に思い、細く天岩屋あまのいわやの戸を開き内側から言いました。

「私が隠れたことによって、高天原たかあまはらは暗くなり葦原中国あしはらのなかつくに全てが暗くなるはずだと思っていたのだが、 どうして天宇受売あめのうずめは楽しそうにしていて、八百万やおよろづの神は皆喜び笑い楽しそうなのか。」

それに天宇受売あめのうずめが申し上げました。

「あなた様よりもとうとい神がいらっしゃいましたので、歓喜して笑い楽しんでいるのです。」

こうして話している間に、天児屋命あめのこやねのみこと布刀玉命ふとだまのみこと八咫鏡やたのかがみ天照大御神あまてらすおおみかみ自身を映し出して見せました。

天照大御神あまてらすおおみかみはいよいよ不思議に思いわずかに戸から身を乗り出し鏡に向かい合った時、そこに隠れて立っていた天手力男神あめのたぢからおのかみがその手を取り引き出しました。

そして、すかさざ布刀玉ふとたまみこと注連縄しりくめなわを持ってそれを天照大御神あまてらすおおみかみの後ろ側に張り渡して申し上げました。

「ここより内側に戻り入ってはなりません。」

このようにして天照大御神あまてらすおおみかみが出ておいでになったので、高天原たかあまはら葦原中国あしはらのなかつくにはおのずから照りわたり明るさを得ました。

於是八百萬神共議而於速須佐之男命負千位置戸亦切鬚及手足爪令拔而神夜良比夜良比岐又食物乞大氣津比賣神爾大氣都比賣自鼻口及尻種種味物取出而種種作具而進時速須佐之男命立伺其態爲穢汚而奉進乃殺其大宜津比賣神故所殺神於身生物者於頭生蠶於二目生稻種於二耳生粟於鼻生小豆於陰生麥於尻生大豆故是神產巢日御祖命令取茲成種故

於是(これにおいて)八百万(やほよろづ)の神共に(はか)(しかるに)速須佐之男(はやすさのを)(みこと)(おいて)千位置戸(ちくらおきど)(おほ)(また)(ひげ)を切り(およ)びて手足の爪抜か(し)(しかるに)神夜良比(かむやらひ)夜良比(やらひ)(き)又食物を大気津比売(おほげつひめ)の神に乞ふ(かれ)大気津比売(おほげつひめ)の鼻口(およ)びて尻と(よ)種種(くさぐさ)味物(ためつもの)取り出でて(しかるに)種種(くさぐさ)に作り(そな)へて(しかるに)(すす)めし時速須佐之男(はやすさのを)(みこと)立ち(うかか)ふに(そ)(さま)穢汚(きたな)(し)(しかるに)奉進(すすめまつ)(すなは)(そ)大宜津比売(おほげつひめ)の神を殺しき(ゆえ)殺されし神の(み)(おいて)(な)りし物(は)頭に(おいて)(こ)(な)二目(ふため)(おいて)稲種(いなくさ)(な)二耳(ふたみみ)(おいて)(あは)(な)り鼻に(おいて)小豆(あづき)(な)(ほと)(おいて)(むぎ)(な)り尻に(おいて)大豆(おほまめ)(な)(かれ)(これ)神産巣日御祖命(かみむすひのみおやのみこと)に取ら(し)(ここ)(たね)と成せり(ゆえ)

こうした事があって、八百万やほよろずの神が会議をしました。

その結果速須佐之男はやすさのおみことに、千位置戸ちくらおきど(はらえとして罪をつぐなわせようと出させる多くの品物やそれを載せる台のこと)の刑(物品によるあがない=財産没収の刑)を科しました。
(犯罪を犯すことはけがれとしていたので、それをはらうため)
またひげ(頭髪を含む頭部全体の毛)を抜き、手足の爪を抜きました。
そして神の世界から追い払われてしまいました。

そうして地上界にやって来て、大気津比売おおげつひめの神に食事をいます。

すると大気津比売おおげつひめは、鼻・口と尻から数々のおいしい食材を出し様々に調理して盛り付け、食べるようすすめました。

速須佐之男命はその様子をとても汚く思いみていましたが、それをそのまま勧められたので大宜津比売おおげつひめの神を殺してしまいました。

すると殺された神の身から産まれた物がありました。
頭にはかいこが産まれ二つの目には稲が産まれ二つの耳にはあわが産まれ、 鼻には小豆あずきが産まれ陰部には麦が産まれ尻には大豆が産まれました。

そこで、これらを神産巣日御祖命かみむすひのみおやのみことに採種させ、ここに作物の種が産まれました。

所避追而降出雲國之肥/上/河上名鳥髮地此時箸從其河流下於是須佐之男命以爲人有其河上而尋覓上往者老夫與老女二人在而童女置中而泣爾問賜之汝等者誰故其老夫答言僕者國神大山/上/津見神之子焉僕名謂足/上/名椎妻名謂手/上/名椎女名謂櫛名田比賣

所避追(かむやらひにやらはれて)(しかるに)出雲国(いづものくに)(の)肥/上声/河(ひのかは)の上の名は鳥髪(とりかみ)の地に(お)りき(こ)の時(はし)(そ)(かは)(よ)り流れ(お)ちぬ於是(これにおいて)須佐之男(すさのを)(みこと)(そ)(かは)の上に人の(あ)らむと以為(おも)ひて(しかるに)(たづ)(もと)め上に(い)(ば)老夫(おきな)(と)老女(おうな)と二人(あ)りて(しかるに)童女(わらはめ)を中に置きて(しかるに)泣きぬ(かれ)(こ)れを問ひ(たま)ふに汝等(いましら)(は)(たれ)(かれ)(そ)老夫(おきな)答へて言はく(やつかれ)(は)国神(くにつかみ)大山/上/津見(おほやまつみ)の神(の)(なり)僕名(あがな)足/上/名椎(あしなつち)(い)ひ妻の名は手/上/名椎(てなつち)(い)(をなご)の名は櫛名田比売(くしなだひめ)(い)ふなり

さて追放されて、出雲国いずものくにかわ(の川=現在の島根県東部を流れる斐伊川ひいかわ)の川上、名を鳥髪とりかみ(島根県仁多郡の鳥上村、現在は奥出雲町の一部)という地に降りました。 この時、はしがその川を流れ下っていきました。

そのため須佐之男すさのをみことは、人が川上にいるのだろうと思いたずね求めて上に行ったところ、老夫と老女の二人がおり童女を間に置いて泣いておりました。

そこで問われました。
「あなた方はだれなのですか。」
それにその老夫が答えて言いました。
「私めは国津神、大山津見おおやまつみの神の子でございます。 私めの名は足名椎あしなつちと言い、妻の名は手名椎てなつちと言い、女の子の名は櫛名田比売くしなだひめと言います。」

亦問汝哭由者何答白言我之女者自本在八稚女是高志之八俣遠呂智 【此三字以音】 毎年來喫今其可來時故泣爾問其形如何答白彼目如赤加賀智而身一有八頭八尾亦其身生蘿及檜榲其長度谿八谷峽八尾而見其腹者悉常血爛也 【此謂赤加賀知者今酸醤者也】

(また)(な)(な)(よし)(は)何かと問ひ答へ(まを)すに言はく我之(あがの)(め)(は)自本(もとより)八つの稚女(わかめ)(あ)りき(これ)高志(こし)(の)八俣(やまた)(を)(ろ)(ち) 【(こ)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 毎年(としのは)に来て(く)らふ今(そ)来可(くべ)かる時(ゆえ)に泣けり(かれ)(そ)の形如何(いか)にと問ひ答へ(まを)さく(か)の目は赤加賀智(かがち)(ごと)にて(しかるに)身一つに八つの(かしら)八つの尾有り(また)(そ)の身に(こけ)(と)(ひ)(すぎ)(お)(そ)の長かるは谿(たに)八谷(やつだに)(かひ)は八つの尾に(わた)りて(しかるに)(そ)の腹を見れ(ば)(ことごと)く常に血(ただ)(なり)(こ)の赤加賀知を(い)(は)今の酸醤(かがち)(は)(なり)

また「あなた方の泣いている理由はなんですか。」と問われました。
それに答え申し上げるには、
「私には、もともと八人の女の子がおりました。 その娘たちは、高志こしに住む八俣遠呂智やまたおろち(八俣やまた大蛇おろち)が毎年来て、一人ずつ食われてしまったのです。そして、今年また来るであろう時となったので泣いていたのです。」

また、「それでは、それはどんな形をしているのですか。」と問われたので答えて申し上げました。
「その目は加賀智(ホオズキの古名)のようで、体一つに八つの頭と八つの尾がございます。 またその身につたひのきすぎが生え、その長さは八つの谷八つの尾根に渡り、 その腹を見ればどこも常に腫れて血がにじんでいるのでございます。」

爾速須佐之男命詔其老夫是汝之女者奉於吾哉答白恐不覺御名爾答詔吾者天照大御神之伊呂勢者也 【自伊下三字以音】 故今自天降坐也爾足名椎手名椎神白然坐者恐立奉爾速須佐之男命乃於湯津爪櫛取成其童女而刺御美豆良告其足名椎手名椎神汝等釀八鹽折之酒亦作廻垣於其垣作八門毎門結八佐受岐 【此三字以音】 毎其佐受岐置酒船而毎船盛其八鹽折酒而待

 

(かれ)速須佐之男(はやすさのを)(みこと)(そ)老夫(をきな)(の)らさく(こ)(なれ)(の)(め)(ば)(あれ)(おいて)(たてまつ)らむ(や)答へて(まを)さく(おそ)りながら御名(みな)不覚(おぼ)えず(さて)答へ(の)らさく(あれ)(は)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(の)伊呂勢(いろせ)(は)(なり) 【伊(よ)(しも)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 (かれ)(あま)(よ)降坐(おりま)せり(なり)(さて)足名椎(あしなつち)手名椎(てなつち)の神(まを)さく(しか)(ま)(ば)(おそ)立奉たてまつ(さて)速須佐之男(はやすさのを)(みこと)(すなは)湯津爪櫛(ゆつつまぐし)(おいて)(そ)童女(わらはめ)を取り成して(しかるに)(おん)美豆良(みづら)に刺しき(そ)足名椎(あしなつち)手名椎(てなつち)の神に(の)らさく汝等(いましら)八鹽折(やしほをり)(の)酒を(かも)(また)(まは)(かき)を作り(そ)(かき)(おいて)八門(やかど)を作り門毎(かどごと)(や)(さ)(ず)(き) 【(こ)三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 を(ゆ)(そ)佐受岐毎(さずきごと)酒船(さかふね)を置きて(しかるに)船毎(ふねごと)(そ)八鹽折(やしほをり)の酒を盛りて(しかるに)待て

そこで、速須佐之男はやすさのおみことが、その老夫におっしゃられました。
「あなたの娘を、私にいただけますか。」

答えて申しました。
「恐れながら、お名前を存じ上げません。」

そこで答えておっしゃられました。
「私は天照大御神あまてらすおおみかみ伊呂勢いろせ(母を同じくする弟)です。そして、天から降りてまいりました。」

そこで、足名椎あしなつち手名椎てなつちが申し上げました。
「そういうことでしたら、恐れながら差し上げさせていただきます。」

さて速須佐之男命はやすさのをは、たちまちその娘の姿を湯津爪櫛ゆつつまぐしに変え、みづら(結った髪)の間に刺しこまれました。

そして、足名椎あしなつち手名椎てなつちの神に告げられました。
「あなたたちは八鹽折やしおおりの酒(八入折やしおおりの酒=何度も繰り返し醸造した酒)をかもし、 また周囲にかきねを張りめぐらしてそのかきねに八つの門を作り、門ごとに八つの桟敷さじき(載せ台)を結びつけその桟敷さじきごとに酒船さかふね(酒を入れておく大きな木製の器)を置き、 船ごとにその八鹽折やしおおりの酒を盛って待ちなさい。」

故隨告而如此設備待之時其八俣遠呂智信如言來乃毎船垂入己頭飮其酒於是飮醉留伏寢爾速須佐之男命拔其所御佩之十拳劒切散其蛇者肥河變血而流故切其中尾時御刀之刄毀爾思怪以御刀之前刺割而見者在都牟刈之大刀故取此大刀思異物而白上於天照大御神也是者草那藝之大刀也 【那藝二字以音】

(かれ)(の)りに(したが)ひて(しかるに)(こ)(まう)くる(そな)への(ごと)待ちし(の)(そ)八俣遠呂智(やまたをろち)言ふの(ごと)(まか)せ来たり(すなは)船毎(ふねごと)(おのおの)の頭を(た)れ入れ(そ)の酒を飲みき(これ)(おいて)飲み(え)(とど)まり伏し(いね)(さて)速須佐之男(はやすさのを)(みこと)(そ)(ところ)御佩(みはかし)(の)十拳(とつか)(つるぎ)を抜き(そ)(をろち)を切り散らせ(ば)(ひ)(かは)は血に変へて(しかるに)流れき(かれ)(そ)の中の尾を切りし時御刀(みかたな)(の)(やひば)(こほ)ちき(ここ)(あや)しと思ほし御刀(みかたな)(もち)(こ)(さき)を刺し割りて(しかるに)見れ(ば)都牟刈(つむかり)(の)大刀(おほたち)(あ)りき(かれ)(こ)大刀(おほたち)を取り(け)しき物と思ほして(しかるに)天照大御神(あまてらすおほみかみ)(おいて)(まを)(あ)(なり)(こ)(は)草那芸(くさなぎ)(の)大刀(おほたち)(なり) 【那芸の二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】

そこで、言われました通りその備えを設けて待っておりました時、八俣遠呂智やまたおろち(八岐大蛇やまたのおろち)がお言葉通りやって来ました。

すぐに、船ごとにおのおの頭を垂れ入れその酒を飲み、そして飲んで醉い動きを止め、突っ伏して寝てしまいました。

そこで速須佐之男はやすさのおみことは、そのびられた(腰にまとっていた)十拳とつかつるぎを抜き、 その大蛇おろちを切り散らしたところ、の川は血に変わって流れました。

そしてそのうちの尾を切った時、御刀の刃がこぼれました。
これは怪しいと思われ、御刀によってこの前を刺し割って見たところ、都牟刈つむかり太刀たちがありました。

そこでこの太刀を取ったところ、不思議な物と思われ天照大御神あまてらすおおみかみつつしんで上げられました。

これが草那芸くさなぎ太刀たち(天叢雲剣あまのむらくものつるぎ草薙剣くさなぎのつるぎ)です。

故是以其速須佐之男命宮可造作之地求出雲國爾到坐須賀 【此二字以音下效此】 地而詔之吾來此地我御心須賀須賀斯而其地作宮坐故其地者於今云須賀也茲大神初作須賀宮之時自其地雲立騰爾作御歌其歌曰夜久毛多都伊豆毛夜幣賀岐都麻碁微爾夜幣賀岐都久流曾能夜幣賀岐袁

(かれ)是以(これにもち)(そ)速須佐之男(はやすさのを)(みこと)(みや)可造作(つくるべき)(の)地を出雲(いづも)の国に求めき(すなは)須賀(すが) 【(こ)二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす(しも)(こ)れに(なら)ふ】 に(いた)(まし)(しかるに)(の)らさく(これ)(あれ)(こ)の地に(こ)りて(あ)御心(みこころ)須賀須賀斯(すがすがし)(しかるに)(そ)の地に(みや)を作り(ま)(ゆえ)(そ)の地(は)今に(おいて)須賀(すが)(い)(なり)(ここ)大神(おほみかみ)初めて須賀(すが)(みや)を作りし(の)(そ)の地(よ)り雲立ち(のぼ)(すなわ)御歌(みうた)を作りき(そ)の歌(いは)夜久毛多都(やくもたつ)伊豆毛夜幣賀岐(いづもやへがき)都麻碁微爾つまごみに夜幣賀岐都久流(やへがきつくる)曾能夜幣賀岐袁(そのやへがきを)

こうした事があったあと、須佐之男の命が宮を造ろうと出雲の地に来られました。
そして、須賀すがまで来られおおせになりました。
私の心は清々すがすがしい。

こうしてここに宮を作ることとなったために、この地は須賀すがと呼ぶようになりました。
そして、その宮が完成した時、その地より雲が立ちのぼっておりました。
そこで歌を作られました。その歌がこれです。

八雲やくも立つ 出雲八重垣いずもやえがき妻籠つまごみに 八重垣やえがき作る その八重垣やえがき

於是喚其足名椎神告言汝者任我宮之首且負名號稻田宮主須賀之八耳神故其櫛名田比賣以久美度邇起而所生神名謂八嶋士奴美神 【自士下三字以音下效此】 又娶大山津見神之女名神大市比賣生子大年神次宇迦之御魂神 【二柱宇迦二字以音】 兄八嶋士奴美神娶大山津見神之女名木花知流 【此二字以音】 比賣生子布波能母遲久奴須奴神

於是(ここにおいて)(そ)足名椎(あしなづち)の神を(め)(の)りて言はく(なれ)(ば)(あ)(みや)(の)(おびと)(ま)(か)つ名を(おほ)稲田宮主(いなだのみやぬし)須賀之八耳神(すがのやつみみのかみ)(なづ)けむ(かれ)(そ)櫛名田比売(くしなだひめ)(もち)久美度邇(くみどに)(おこ)して(しかるに)生みし(ところ)神の名は八嶋士奴美神やしまじぬみのかみ 【士(よ)り下三字(みもじ)(こえ)(もち)てす(しも)(こ)(なら)ふ】 と(い)ふ又大山津見神(おほやまつみのかみ)(の)(むすめ)名は神大市比売(かむおほいちひめ)(めあは)せて(みこ)大年神(おほとしのかみ)次に宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ) 【二柱(ふたはしら)】 【宇迦の二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 を生みき兄の八嶋士奴美神やしまじぬみのかみ大山津見神おおやまつみのかみ(の)(むすめ)名は木花知流このはなちる 【(こ)二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 比売(ひめ)(めあは)せて子布波能母遅久奴須奴神(ふはのもぢくぬすぬのかみ)を生みき

そうしてここに、その足名椎あしなづちの神をお招きされ、こう命じられました。
「あなたを、私の宮の宮司ぐうじに任じましょう。そして名を稲田宮主須賀之八耳神いなだのみやぬしすがのやつみみのかみとしましょう。」

さて、その櫛名田比売くしなだひめと寝所で交わり、生んだ神の名は八嶋士奴美神やしまじぬみのかみといいます。

又、大山津見神おおやまつみのかみの娘、名は神大市比売かむおおいちひめめとり、子大年神おおとしのかみ次に宇迦之御魂神うかのみたまのかみを産みました。

兄の八嶋士奴美神やしまじぬみのかみは、大山津見神おおやまつみのかみの娘、名は木花知流比売このはなのちるひめめとり、子布波能母遅久奴須奴神ふはのもぢくぬすぬのかみを産みました。

此神娶淤迦美神之女名日河比賣生子深淵之水夜禮花神 【夜禮二字以音】 此神娶天之都度閇知泥/上/神 【自都下五字以音】 生子淤美豆奴神 【此神名以音】 此神娶布怒豆怒神 【此神名以音】 之女名布帝耳/上/神 【布帝二字以音】 生子天之冬衣神此神娶刺國大/上/神之女名刺國若比賣生子大國主神亦名謂大穴牟遲神 【牟遲二字以音】 亦名謂葦原色許男神 【色許二字以音】 亦名謂八千矛神亦名謂宇都志國玉神 【宇都志三字以音】 幷有五名

(こ)の神淤迦美神(おかみのかみ)(の)(むすめ)名は日河比売(ひかわひめ)(めあは)せ子深淵之水夜礼花神(ふかふちのみづやれはなのかみ) 【夜礼二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 を生みき(こ)の神天之都度閉知泥(あめのつどへちね)/上声/の神 【都(よ)(しも)五字(いつもじ)(こえ)(もち)てす】 を(めあは)せて子淤美豆奴(おみづぬ)の神 【(こ)神名(かむな)(こえ)(もち)てす】 を生みき此の神布怒豆怒(ふのづの)の神 【(こ)神名(かむな)(こえ)(もち)てす 】(の)(むすめ)名は布帝耳(ふてみみ)/上声/の神 【布帝の二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 を(めあは)せて子天之冬衣あめのふゆきぬの神を生みき(こ)神刺国大(さしくにおほ)/上声/の神(の)(むすめ)名は刺国若比売(さしくにわかひめ)(めあは)せて子大国主神(おほくにぬしのかみ)を生み(また)の名は大穴牟遅(おほなむぢ)神 【牟遅の二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 と(い)ひて(また)の名は葦原色許男(あしはらしこを)の神 【色許の二字(ふたもじ)(こえ)(もち)てす】 と(い)ひて(また)の名は八千矛(やちほこ)の神と(い)ひて(また)の名は宇都志国玉(うつしくにたま)の神 【宇都志の三字(みもじ)(こえ)(もち)てす】 と(い)ひて(あは)せて五名(いつな)有り。

この神は、淤迦美神おかみのかみの娘、名は日河比売ひかわひめめとり、子深淵之水夜礼花神ふかふちのみずやれはなのかみを産みました。

この神は、天之都度閉知泥神あめのつどへちねのかみめとり、子淤美豆奴神おみづぬのかみを産みました。

この神は、布怒豆怒神ふぬづぬのかみの娘、名は布帝耳神ふてみみのかみめとり、子天之冬衣神あめのふゆきぬのかみを産みました。

この神は、刺国大神さしくにおおのかみの娘、名は刺国若比売さしくにわかひめめとり、子大国主神おおくにぬしのかみを産み、またの名を大穴牟遅神おおなむぢのかみといい、またの名を葦原色許男神あしはらしこをのかみといい、またの名を八千矛神やちほこのかみといい、またの名を宇都志国玉神うつしくにたまのかみといい、合わせて五つの名が有ります。

Posted by まれびと